第139章

田中辰哉はふと目を上げ、大島莉理を見た。

視線がぶつかる。どちらも何も言わない。沈黙が落ちた――のに、なぜか妙に甘ったるい空気だけが残る。

岩崎太陽は自分が余計なことを言った自覚があり、息をするのすら怖かった。

「入らないのか」

結局、先に口を開いたのは田中辰哉だった。

大島莉理は一歩、室内へ。何事もなかったみたいに田中辰哉の隣へ腰を下ろす。

落ち着きすぎだ。

そのせいで岩崎太陽は、彼女がさっきの話を聞いていたのかどうか判断できない。会食の後半は言葉を選びに選び、食事が終わるや否や契約書を差し出した。

田中辰哉がこの美術展に顔を出したのは、もちろん自分の持つ先端技術のためだ。...

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